あやかし考 田中貴子

あやかし考 不思議の中世へ

あやかし考 不思議の中世へ

「茸」は都市生活を山野と区別する中世の町衆の時代に成立、茸は山野の恵みであっても、都市の中に入ってくるのは不気味だ、という見方。これは中世でなくとも、かつて古橋『平安京の都市生活と郊外』で、実態とは異なり、山の上から山裾に向かって「春が来る」という認識を知ったことがあるが、自然をいわば「位置付ける」都会人共通の意識なのではないか、と感じた。以下、主な内容。▼「道成寺縁起」に見られる、女性・蛇=龍、鐘の持つ象徴性を指摘する。龍・水・女性などは、『外法と愛法の中世』などでも論じられたテーマで、安徳天皇についてもやはり厳島神社との絡みで触れられている。▼安倍晴明について、院政期はこれまで以上に禁忌が増えた=禁忌さえ守っていれば安全、陰陽師の役割も、暦や天文など国家のことというよりも、個人の生命を守護する方向に向かい、その需要の中で、阿部仲麻呂と結び付けられる晴明がスーパースターとなった。▼「けころす」という神が人を罰して殺す際に使われる表現は、かつて雷に打たれたときに使われたことから、雷のイメージとしての龍・鶏が巨大な爪を持っているところまで論を導いている。