2004-11-01から1ヶ月間の記事一覧

第三の時効 横山秀夫

表題作が最高。いったん読者を驚かせておいて、さらに落とす。いったん驚いて安心しているところだからさらに効果的。心理面を描いたものとしては「囚人のジレンマ」。「モノクロームの反転」は、「トリック」?に寄りかかり過ぎか。「ペルソナの微笑」は、…

クライマーズ・ハイ 横山秀夫

地方新聞社の「もらい事故」に対する意識や退嬰ぶりなど、本来の雑観の落としや連載の第2社会面、特ダネ見送りなどと合わせて後味が悪い感じ。最後で救っているが。「下りるために登る」言葉の趣旨としては、真剣に上ろうと努めなければ下りる資格もできな…

戦場の精神史 佐伯真一

武士は名誉を重んじるが戦場での名誉は勝利や力、一般社会での名誉は公正や信義。平和な社会の価値基準を中世武士にも当てはめたことが混乱。以下、時代ごとに。▽古代。だまし討ちはけものに対しては当然。蝦夷も。戦争は狩りとスポーツの間を動く。▽村岡五…

荒蝦夷 熊谷達也

熊狩りや山羊狩り、子供まで殺すなどの蝦夷の風俗で呰麻呂の残虐さを描いているのはリアリティがあるとして、催眠術で母礼に操られた阿弖流為といい、何の魅力も見せずに死ぬ綺羅といい、どうにも愚作、といって悪ければ凡作、という感じ。呰麻呂に共感でき…

裸者と裸者 上・下 打海文三

上は主に茨城県を中心とした内戦の話。下はほとんど多摩市を舞台としたゲリラ戦の話。茨城は土地カンがあるので読みやすかったが、馴染みのない人は少し大変かも。どちらもすごく応援したくなる、共感したくなる。登場人物の善玉悪玉がかなりはっきりしてい…

源義経 五味文彦

▽常磐は保元の乱の後のことを考えて逃げたが、関東のならいとは違い平氏は女子供まではまでは殺さず常磐も大和宇陀から出てきた。▽義経は義仲を滅ぼした後京都近国の行政鳥瞰的な役割だった。それを1184年3月、中原久経・近藤国平らに権限を奪われた。▽…

外法と愛法の中世 田中貴子

宇治の宝蔵の話以外はなかなか難解。源氏物語の雲隠巻六帖など、存在して欲しいけど存在していないものが宇治の宝蔵に秘蔵されているから、とされる。後は酒呑童子の首とか。氏の長者の検分「宇治入り」が摂関家が衰えた忠実から。頼通が宝蔵に執着して龍に…

言論統制 佐藤卓己

情報官として、言論統制に辣腕をふるった鈴木庫三が実は貧窮から超人的な努力で倫理や哲学の大学教官なみの教養を積み重ねた男であったこと、そのことを編集者達は知らなかったのではないか、とのこと。ハビトゥスの差から鈴木は編集者達を弱者とは思わなか…

中世神話 山本ひろ子

外宮の豊受大神が御饌の神から、天御中主神(隠退神)とのつながり「豊葦原中国」との「豊」の通字で内宮との優位にもっていこうという動き。国生み神話ではイザナギ・イザナミが天空に八坂瓊曲玉を捧げて生まれた。国生みでは、天瓊矛が独股杵のイメージ。…

王朝史の軌跡 角田文衛

藤原基成が信頼の兄でそこそこ貴人であることは知っていたが、陸奥守が当時は基本的に遙任ではなかったこと、基衡相手に硬骨漢ぶりを発揮した人物と交換(用語があったが忘れた)したことは初めて知った。また村上元三や司馬遼太郎の小説で悪役のように、小…

京・鎌倉の王権 五味文彦・編

▽鎌倉幕府は東国国家か、軍事権門か。幕府成立時期を、頼朝の根拠地が固まった1180、東国支配を公認させた寿永宣旨を獲得した1183かをとるのは東国国家。守護地頭設置の文治勅許を獲得した1185か右大将の1190か征夷大将軍の1192をとるの…