2005-01-01から1ヶ月間の記事一覧

蝶のゆくえ 橋本治

読んでいる間、ずっと不安で落ち着かない気持ちの短編集。なんなんだ。社会面の事件記事になるような出来事もあれば、日常の、当事者にとっては大事、また本当に日常の暮らしが、切ないまでの現実感をもって迫ってくる。ホラーだ。ところで、タイトル『蝶の…

ブルータワー 石田衣良

思い付きによる壮大な駄作かそれとも斬新な傑作か。評価は分かれるのだろう。最初はおもしろく、途中でついて行けなくなり、再び離せなくなる。南北問題を高度の問題に置き換えた。最近の超高層マンションの連想からも悪くない。未来の名前も暴走族みたいだ…

平日は夜11時を過ぎたら酒を止めるようにしているが、調子こんで2時まで飲んでしまった。『歴史群像』を読みながらビールを飲むのは10年来の喜びなのだ。創刊号から全て買っている。ここ数年、この雑誌の軍事オタク度がとみに高まり、やや敬遠していた…

穢と大祓 山本幸司

穢の伝染について、『延喜式』の規定では、「甲処に穢有り、乙その処に入る(著座をいう)。乙および同処の人皆穢たり。丙、乙処に入る。ただ丙一身穢たり。・・丁、丙処に入る。穢たらず。」補足『新儀式』「死骸有る間、その処に入る者甲たり。骸を収むる…

騎兵と歩兵の中世史 近藤好和

史料や遺品の考察を通じ、武具や戦士の形態の変化を社会変動の要因から説明しているのが興味深い。戦士の形態を「弓射騎兵」「弓射歩兵」「打物騎兵」「打物歩兵」の4つに分類する。▼前九年では弓射騎兵主体で治承・寿永期(平家物語)もそうだったのが、太…

疲れが残っている。10時過ぎにようやく起きる。恵方巻。入浴。読書。3時頃、セブンイレブンの20種サラダ。夜は味噌ラーメンときのうのキムチ鍋。

早朝出勤。疲れた。夕方早めに引き揚げる。ままかり酢漬や青柳酢味噌を肴に日本酒を冷や(冷酒ではない)で。キムチ鍋をビールで。缶チューハイで締めて夜10時前には寝る。

天馬、翔ける 安部龍太郎

食い足りない。特に頼朝周辺が。義経と頼朝とで響き合うようにするのがねらいだったのだろうが、成功したとは言えない。義経の平泉以降もないし。どちらかに絞るべきだったのでは。また義経の人間的未熟さを描いているのだろうが、知章や副将などの残虐さは…

黄金太閤 山室恭子

秀吉政権を、黄金の魅力のパフォーマンスで庶民の人気を高め刀狩りや検地など庶民生活の根底を覆す改革を実行できたとみて(他人の懐をあてにした北野大茶会はだめだったが、金賦りや越中攻め九州動座など)、唐入りも全国政権維持のためのパフォーマンス(…

黄金国家 保立道久

知的刺激に満ちた本。朝鮮・渤海・中国との関わりから奈良〜平安初期の歴史を見る。黄金がとれず朝鮮半島に依存していたのが大仏建立の際に国内に見つかったことにも触れているが、タイトルほど黄金はキーワードではないのでは。▽第1章では、奈良時代の日本…

増補 吾妻鏡の方法 五味文彦

文献学?のような記述の部分は退屈だが、「曽我物語」を「吾妻鏡」を補うものとして、王殺しのモチーフを浮かび上がらせる視点(頼経・頼嗣・宗尊の追放は擬似的な王殺し)は新鮮。源実朝の政所の充実(別当が京下りの官人や在京御家人を含む9人に)が将軍…

鎌倉と京 五味文彦

日蓮が鎌倉時代の日本について、男女比を2対3としたことについて、勧進の結果や仏の胎内に納められた結縁者の名簿などから相当とした上で、宗教が起こった時代の背景としている。新鮮な見解だ。また、鎌倉の鶴岡八幡宮と若宮大路を、大内裏と朱雀大路に見…

昼食

半額セール中の東新宿の「くしろラーメン柳苑」。

葬儀

葬儀に行く。40前の若さで奥様が亡くなり、小学生の男の子と2歳の女の子が残された。ご主人はずっと女の子を抱いていたが、いよいよ棺を覆うとき、彼女を親戚の方に預けて棺にかがみ込み、奥様の顔を何度も撫でながら、1分ほどか、小声で何か語りかけてい…

チルドレン 伊坂幸太郎

伊坂幸太郎というと、『ラッシュライフ』や『陽気なギャングが地球を回す』が好きな作品で、『重力ピエロ』や『アヒルと鴨のコインロッカー』に含まれている人間存在そのものに根付いているような邪悪さが、どうにも苦手だ(第1作の『オーデュボンの祈り』も…

白菜漬物鍋

白菜の漬物を具にした鍋を食べに新宿「随園別館」に行く。1年ほど前に、六本木の「紅鳳軒」という店に職場の後輩と行った際に初めて食べ、うまさにびっくりしたのだ。上湯で煮た漬物は絶品であった。オープン間もない紅鳳軒は当時確か「中国東北料理」と銘打…

帰ってきたマルタン・ゲール ナタリー・Z・デーヴィス

夫・マルタンそっくりの男(アンリ・ド・テュル)が10年以上経って戻ってくる。夫はあまり気立てのよい男ではなかったが、陽気で楽しい男になっていた。妻(ベルトランド)は、偽者であることを果たして知っていたのか。著者は、知っていたであろう、とし…

夜空はなぜ暗い? エドワード・ハリソン

当然ではないか、という疑問から始まって宇宙の成り立ちについての説の発展について論じている。その説の背景には、光には速度があるということ(まだ届いていない、という考え方の前提)、エネルギー不滅の法則(従って、ちりなどで光が吸収されて届かない…

電子の星 石田衣良

『池袋ウエストパーク』シリーズは、いわば都市型人情小説、というところか。これが新宿でも渋谷でもだめで、古くからの下町と新しいもの(洗練されているものとそうでないものを含めて)強いて言えば上野だろうか(と思っていたら、上野が出てきた)。キン…

NHK

何やら変なことになっている。圧力があったとするプロデューサーとなかったとする政治家とNHK。なんだか、上前淳一郎氏の名著『支店長はなぜ死んだか』を思い出して探してみたが、ちょっと見つからない。そのなかに「スポンサーからの圧力はあったか」(…

たるみ

先日、別の部の製造ラインでトラブルが発生し、パッケージと違う商品がいったん店頭に並んでしまったり(すぐ回収)、資材の配置を誤ってラインが一時止まってしまうトラブルがあった。社長は課長以上が集まる会議で「工場内で緊張感がまるでない。事故が起…

愚か者死すべし

のリアリティーのなさは、報道写真に日付・時間が入るという描写だという。33ページ、「報道の写真にプリントされていた時間」というくだりである。報道写真はそんなものはいれないそうである。

芥川賞・直木賞

今回の受賞者は、どちらも受賞作は未読だが、過去に一作だが作品を読んだことのある作家だった。阿部和重氏は『シンセミア』である。大作であった。受賞作も故郷(山形県東根市神町)が舞台だそうだが、『シンセミア』風だとすると、山形の人もあまり「郷土…

生首に聞いてみろ 法月綸太郎

評価は非常に高いらしい。確かに伏線が慎重に張られた意外なトリックだし、ややもするとグロテスクな話をそう感じさせずにまとめている。ただ、なんというか、巧みすぎて熱が感じられないというか、どこか人工的な感じが強い(彫刻というテーマでその効果を…

沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻一,二,三,四 夢枕獏

なんとまあ、という感想である。いかにも怪しげな事件から始まり、日本人にも馴染みの深い玄宗皇帝と楊貴妃の悲恋、そしてその背景である白楽天。白楽天と空海が同じ時代の人でたまたま長安で出会ったら、という発想が素晴らしい。空海=晴明・逸勢=博雅と…

義経

NHK大河ドラマが始まった。原作は、必ずしも義経が主人公というわけではないが。どちらかというと時子だが、松坂慶子、というのは明るい感じでいいのでは?配役では清盛もいい。そして、最近あまり見なくなった常盤が新鮮だ。実直二代目風重盛や、弱気傍…

阿弥陀堂だより 南木佳士

間然としたところがない、というのが感想。少年期の谷中村の生活の情景や、美智子と親しくなるくだり、さらにその後の文通など。そして胎児の死をきっかけにした美智子の病が癒され、そして小百合の病気の治療と妊娠。その背景にあって変わらない阿弥陀堂と…

愚か者死すべし 原寮

りょう、は外字で実際はウ冠がない。ハードボイルドな文章で、言動もハードボイルドだが、じつはハードボイルドは余り好みではない。警察署構内での被疑者狙撃・警官殺しと「資産家」老人の誘拐の二つの事件(銀行での狙撃を入れると三つ)を絡ませているが…

朝寝

休みの日も、昼前には起きるようにしているのだが、きょうは12時半頃まで寝てしまった。肉野菜炒めと納豆、卵。2杯目のご飯は炒めの皿に残った汁に入れていただく。

マイ・ホームタウン 熊谷達也

「和製スタンド・バイ・ミー」というキャッチフレーズを見た記憶がある。不可思議さをどこかに残しつつ、子供時代の他愛のない、だからこそ珠玉といえる思い出が、「大人びた子供」とでもいうべき文体でつづられる。「ダルマストーブと雪女」など最も好きな…