2004-09-01から1ヶ月間の記事一覧

中世のうわさ 酒井紀美

うわさしか情報伝達手段がなかった時代、うわさは神が広めた、という側面、多くの人が言っているならば真実、とみなされた点(鎌倉幕府の悪党対策)、疑われた場合、神に証を立てる(参篭して「失」があるかどうか)、など。全体としては、うわさ、というも…

大仏再建 五味文彦

「勧進」という手法が広まっていて、民衆の信仰に結びつき大仏が造られたこと、大仏再建の勧進は平家と源氏の争いのまっただ中で始まっていたこと。大仏再建―中世民衆の熱狂 (講談社選書メチエ)作者: 五味文彦出版社/メーカー: 講談社発売日: 1995/09メディ…

平安貴族の世界 村井康彦 徳間書店

位禄遥授制などは目新しかったが、他は特に新味なし。68年出版の本だからな。

にっぽん音吉漂流記 春名徹

『開国と幕末変革』を読むまで全く知らなかった話。庄蔵や寿三郎が漂流を自分たちの罪と諦め漂流民の帰国に力を尽くした話、音吉が遣欧使節を訪ねたのは使節側からは望郷の念と片付けられたが実は音吉からは使節を救おうという気持ちがあったのではないか、…

鎌倉幕府の転換点 永井晋

亀の前事件における頼朝・大江広元と政子の対立、伊賀氏の乱がらみの政子と泰時の対立、宝治合戦の際の御家人の動きなど、核家族的夫婦結合が意外に要素となっている、という感じ。源頼政が八条院系武力を率いる大将で、頼朝はあまりあてにされていなかった…

蒙古襲来 網野善彦 小学館

鎌倉期が農業民と職人とが競合した最後の時期、ととらえ、遍歴する職人は関や津を自在に行き来するために天皇の権威と結びついた、という説。興味深い。花園天皇が職人歌合わせを描いた、という話。日野資朝と交流があった、という話。

黒船前夜の出会い 平尾信子

鳥島に漂着した漂流民・途中で難破した漂流民22人(船員は28人程度)を収容し、捕鯨の役目を一時置いて江戸湾に向かったクーパー船長。人道的でなおかつ伊豆七島で下ろさず江戸湾に直行することで鎖国日本にアメリカを印象付けようという心理。良い意味での…

世界のすべての七月 ティム・オブライエン

同窓会から話をはじめるというのは一種のパターンだが、ベトナム戦争時の大学生活の時代を取り上げるのは、高橋和巳の『憂鬱なる党派』を思い出させるがエピソードの多彩さは比較にならない。。太った男がダイエットから急に自信を持ち、つまらない嘘からス…

後白河上皇 安田元久

後白河上皇 (人物叢書)作者: 安田元久出版社/メーカー: 吉川弘文館発売日: 1986/11/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (8件) を見る

頼朝の精神史 山本幸司

冷酷とみられがちな頼朝がじつはこまやかな愛情の持ち主で、ただそれが向かうのは自分を脅かす恐れのない人。梶原景時は降伏した武士を預かり許すことで人望があったのではないかということ、など。逆櫓の例をタキトゥスから持ってくるあたりは興味深い。頼…

開国と幕末変革 井上勝生

外国との出会い、一揆の話、大名と国替え、木綿とマニファクチュアなど、統制経済のゆがみから開国でどんなひずみが生じるか、なかなか興味深かった。開国と幕末変革 (日本の歴史)作者: 井上勝生出版社/メーカー: 講談社発売日: 2002/05/08メディア: 単行本…

われ沽券にかかわらず 渡辺房男

まずまずだが、語りの手法などこれでよかったのか。飯嶋和一風の手法でも別の熱血小説になったのでは?われ沽券にかかわらず作者: 渡辺房男出版社/メーカー: 講談社発売日: 2003/03メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (3件) を見る

石の来歴 奥泉光

迫力はあるが、後半やや現実感が薄くなるか。本当に彼が長男を殺したのか。ありえないわけで。次男の生き方もややご都合主義的展開に感じた。「三つ目のうなぎ」の方が迫力はないが好み。石の来歴 (文春文庫)作者: 奥泉光出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1…

金目銀目五万両 渡辺房男

金目と銀目という言葉は耳慣れないが、非常に難しいテーマをうまくこなしている。人物描写もまずまず。統制経済が維新で規制緩和となったときどうなるか、テーマはよいか。金目銀目五万両作者: 渡辺房男出版社/メーカー: 新人物往来社発売日: 2001/02メディ…

箱根の坂 司馬遼太郎

さすが司馬遼太郎だが、北条早雲という前半生のよくわからない人物は描きにくいか。山城宇治・備前・伊勢と出生の各説を巧みに取り入れ、鞍作りにしているのはおもしろいが。司馬遼太郎全集〈51〉箱根の坂作者: 司馬遼太郎出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: …