主人公は、海の道、強いて言えば物語の一部ではあるが
信西ということか(もちろん通低するものとして
祇園女御がいるが)。頼長と違い、生きた知識の持ち主として好意的に描かれている。
摂家は
守旧派で海の道を知らず、朝家、具体的には
院政とそれに結びついた商人・寺社が改革派、平家はその流れに乗った、という構図か。清盛の死からの平家滅亡は具体的には描かれず、なぜか
西園寺公経にスポットをあてて終わっている。それにしても、保元の新制での九州を「九国」として九州地方のこととして、「海の道に通じる全てに先んじて統制すべき地域」という表現はいかがなものか。九州・九国は漢語的表現で古代中国にあった9ヶ国すなわち国土全体を指すことは明白で、とんだ浅薄か、へたなミ
スリードだ。そのほか、乱後、忠通が晴れ晴れと氏の長者になったとか、
道長が関白だったとか、
閑院流出身と家柄十分の璋子が
祇園女御の養女となったから身分が怪しくなって入内できないとか、本来
衛門府の官人が兼務する
検非違使なのに、新たに
衛府も兼ねることになった、とか、構想はともかくも、ディテールは首をひねることばかり、という感じだ。