「負けた」教の信者たち 斎藤環

評価がコミュニケーション能力方面に特化され、「クラスの明るい人気者」になれない者は「負けた」意識を持ち、それがプライドを維持する糧になる、「明るい人気者」が必ずしも実社会で成功するとは限らないから、勝者のいないところで一方的に敗退を続けているのだそうな。▽引きこもりが韓国とは対照的にネットが原因でない(引きこもり当初ネットは10%くらい)というのは、へえ、という感じだった。いじめなど、日本独特の事情もあろう(韓国のいじめはネットで転校先まで申し送りされるそうである)。▽深夜徘徊について、引きこもりの男が外出できるのは深夜なのに、それを禁止するのはいかがなものか、とか、松田洋子の傑作『薫の秘話』が世界初の引きこもりを描いたフィクションかも、とする位置付け(薫の特定方面に向けた積極性は、引きこもりとは違うように思うけど)。▽また、少年犯罪に際し、「俗情との結託」(大西巨人)や「祭り」との言葉で象徴させているが、根拠のない増加・凶悪化傾向の指摘とか、テレビゲーム批判・雑誌バッシングとかに走る風潮を厳しく批判している。