陽炎の旗 北方謙三

陽炎の旗 (新潮文庫)

陽炎の旗 (新潮文庫)

足利直冬の息・頼冬を主人公に、『武王の門』の続編という体裁で、懐良親王の理想は結局九州独立国というより、息・月王丸による交易主体、そのための南北朝合一、と描かれている。足利義満の野望の前提として、帝を何人も立てて権威を失墜させるという策略として管領斯波義将を置き、逆手にとって頼冬を将軍候補として匂わせる、という駒としても描かれる。最後の、『武王の門』のようなきれいごとでない、いわゆる「倭寇」としての竜王丸は、やや興ざめだが。