荘園の世界 稲垣泰彦・編

荘園の世界 (UP選書 114)

荘園の世界 (UP選書 114)

荘園という、中古から中世特有の土地に対する権利形態を舞台に、荘園の開発の模様や農民の武士・荘園領主らの戦いの模様を描いている。
▽「東国武士の基盤ー上野国新田荘ー」扇状地に立脚する新田荘が灌漑水利をめぐり水系で、岩松氏と大館氏が元亨2年に争っている。旱年には各所で起こりうる事態で幕府の裁判に付されたことは新田氏の惣領の統制力の弱さを意味し、新田義貞の軍事指揮権が限定されている事態の徴候であった。
▽「湖の民と惣の自治近江国菅浦ー」大浦との対立の中で、出作の田畠の半分を山門に寄進しして対抗、内蔵寮と在家全員が供御を貢進する代わりに漁や廻船を認めさせた。しかしやがて湖南の発展で経済的に立ち遅れ、浅井氏に屈服。
▽「地頭非法と片仮名言上状ー紀伊国阿氐河荘ー」地頭湯浅氏に対し、領家寂楽寺は百姓との結合を意識的に吸収し、地頭と対立、得宗被官を背景に、片仮名言上状は地頭に対する訴訟を効果的にする手段として裁判の場に提出されたもの。しかし、その伏線としての集団逃亡の戦術の意味を積極的に捉えるべきと。
▽「惣荘一揆の基盤と展開ー播磨国矢野荘ー」東寺の代官祐尊と有力名主実円との確執、十三日講事件とその後、守護赤松氏を背景に強硬に突き進み、実円の子実長との争いの中で20年越しの支配を終える。しかし最終的には、赤松氏の支配に。