説得 大泉実成

説得―エホバの証人と輸血拒否事件 (講談社文庫)

説得―エホバの証人と輸血拒否事件 (講談社文庫)

なんという迫力。「11章 説得」は、まさに白眉である。それまでのいわば「潜入」で「エホバの証人」たちにある程度の共感を持った上で、さらに医師たちをぶつけてくる。父に「ごめんね」と謝る大。あれだけ喧伝され、筆者を取材に駆り立てた大の「生きたい」は、実は誰も聞いていなかった。この場合の潜入という手法は、しかし、許されるというより全く問題を感じないが。筆者の親族に信者がいて決して他人事でない視点でいるからか。少なくとも鎌田慧の『自動車絶望工場』なんかより(鎌田のルポ自体が優れているかどうかは別として)。