スープ・オペラ 阿川佐和子

スープ・オペラ

スープ・オペラ

不自然な設定をそうと感じさせずに筋を展開していくのは名人芸か。スープを媒介にして不思議な同居関係が築かれ壊れまた創られていく。鶏ガラスープ、ビシソワーズ、酸辣湯、もう少し季節ごとに違うスープが出てきてもよかったが、それをするとやり過ぎでわざとらしいか。父親疑惑の登場のさせ方も処理もお見事。本当に父親だとしたらトバちゃんのいなくなってすぐに現れるあたり出来過ぎで(連絡をとっていれば別だがそれはトバちゃんの反応からありえない)、不自然さは残るのだけど。変てこで傲慢な売れっ子小説家は、ひょっとして阿川弘之が入っているのか。決して恋愛小説家ではないけど、妻を虐げる割に妻に去られるとヘタレ丸出しというのは、世の亭主関白を連想させるのだが。