華族 小田部雄次

華族―近代日本貴族の虚像と実像 (中公新書)

華族―近代日本貴族の虚像と実像 (中公新書)

さすが『家宝の行方』の著者である。
▽「第3章 肥大化する華族」での「朝鮮貴族の苦悩」は、まさに「忘れられた『華族』」である朝鮮貴族について紹介されていて興味深かった。王公族として遇された旧国王家との一体感から心ならずも爵位を受けたものの独立運動に荷担したり退隠したり、なかには恥じて自殺するものまでいたという。一方で、勅任の貴族院議員として選ばれる者もいたりとさまざまだったようだ。
▽「第4章 崩壊への道程」では、日清・日露で大量の軍功華族が誕生したのに対し、盧溝橋事件以降の「軍功」による叙爵は皆無だったと。あれだけ軍人が威張っていた時代なのに意外に感じた。「天皇や政府指導層は、日中戦争から太平洋戦争へと続いた一連の戦闘を、叙爵や陞爵に値する戦果とは思っていなかったのかもしれない」とやや皮肉に表現。「醜聞」については、いずれ、参考文献に挙げられた本を読んでみよう。