Gファイル 武田頼政

Gファイル―長嶋茂雄と黒衣の参謀

Gファイル―長嶋茂雄と黒衣の参謀

独特のキャラクターの指揮官を支えて巨人軍という組織に立ち向かった詳細な記録。河田に寄り添った視点のせいか、スパイ行為や死球指示も野村ヤクルトを引き合いに出して正当化している部分がやや気になるが、94年の中日との最終決戦や96年の大逆転「メークドラマ」の裏事情が迫力とともにあぶり出されてくる。そして、薄給で戦い抜いたV9戦士たちがコーチやフロントとなった現在、ツケを取り立てる債権者と化し、長嶋は利益代表に過ぎない、という見立て、結局信頼できるのは生え抜きではなく外部からというのは何だが幕末の徳川幕府のようでもある。そして、長嶋がいかに仕えがいのない主君であったか。巨人の監督を続けるために河田を切っておいて、それでも助けを求めてくる長嶋の姿はもの悲しい。