氷結の森 熊谷達也

氷結の森

氷結の森

舞台となる樺太・シベリアの大自然にふさわしい雄大な小説だ。熊谷さんの小説の最高傑作と言ってもいいのかもしれない。ただ、香代がどうしても、とってつけた(物語の必要上やむなくつくられた)人物としか感じられないのはなぜだろう。また、ロシア語ができないのにパルチザンの正体を見抜いたり、尼港事件の前の言動など矢一郎がややできすぎの感があること、逃避行の原因であり前半のクライマックスともなる辰治の存在感が、尼港事件の圧倒的な迫力を前に、小説読了後には全くなくなってしまうこと、など、それなりに気になる点もあるけれど。