こぼれ放哉 古田十駕

こぼれ放哉

こぼれ放哉

相思の従妹との結婚を認められなかったことがきっかけでの深酒が、酒癖の悪さから東洋生保の課長、朝鮮損保の支配人という超エリートの地位を棒に振り、結核に蝕まれていく。転落の軌跡と放哉の心境が淡々と、しかし静かな迫力を持って迫ってくる。最期の地となる小豆島での素封家や住職、料理屋、医師、そして親切な隣人たちとの生活は、この評伝の白眉だろう。これは(『風譚義経』と違って)いい。