海に降る雪 畑山博

海に降る雪 (1976年)

海に降る雪 (1976年)

なんとも言えないタイトル。太田裕美のアルバム『12月の旅人』所収の名曲でこの言葉と出逢って30年近く、和由布子主演の映画で原作の存在を知りながら、20年以上経って手に取った。NHKとおぼしき放送局の下請け制作会社所属の音声マン・裕一が出会った秋田出身の塩子。田舎に絶望し上京して義兄に犯され、それでも関係を絶てないまま、ほかの男たちとも付き合う塩子。日記を読んで過去を知ってしまったことから、いったん別れたものの、何度かの手紙のやり取りの末、付き合いが復活する。このあたりの未練さがいい。その後、大沢と早苗とも交え、危ういながらも明るい交際が続くが、塩子の妊娠と堕胎を機に、ふたりは別れていく。恵まれない子供時代を過ごした男女が幸せを求めて、なにが幸せなのかもはっきりせぬままもがく物語。やはりもっと早く読むべきであった。