極楽谷に死す 西木正明

極楽谷に死す

極楽谷に死す

今、昭和30年代がブームだが、いずれ1970年代がレトロ的に注目される時が来るのだろうか。これまでは、まさに現役世代の時間であり、語られ方も現代史という位置づけである意味、生々しかった。それが時間とともに変わりつつあるような、そんな感を抱かせるような作品集。海外を舞台に、ベトナム反戦運動学生運動とその挫折を抱えた初老の男女たちのやるせない物語。ほぼ発表順に並べられた順で後半にいくほど、よくなっていくが、なかでも、順番をずらして(わざとか?)置かれている「ボスポラス海峡」が一番か。