八日目の蝉 角田光代

八日目の蝉

八日目の蝉

小説を読む楽しみの一つは、他人の人生の一時期と一体化し、自分の知らない世界に連れて行ってもらうことだが、この作品は、その意味で希和子の逃亡生活の描写は十分満足できる。「エンジェルホーム」の設定が秀逸。マロンちゃんは、なるほど、こういう役回りか、と筋立ても考えられている。人の善意、悪意、優柔不断、そういったものがしっかりしたディテールのもとで描かれている。