左対右きき手大研究 八田武志

左対右きき手大研究 (DOJIN選書 18)

左対右きき手大研究 (DOJIN選書 18)

きき手というのが、こんなに「深い」とは知らなかった。▽きき手が決まるのは、どうやらさまざまな説が現れては検証されることが繰り返されているようだが、遺伝的(左ききは劣勢だが中間もあってそれが半々に分かれると大体12から13%になるという)な考え方やホルモン学説、出産時のトラブルなどの説をふまえると、きき手の矯正は好ましくないと。ただ、さほど要因が強くない場合は、幼いうちに試みてみてもよいと(その程度で矯正されるようであれば、影響は軽微だから)。▽サルは左ききが多い、という報告について、単純にえさをとるような動作はそうでも、多少複雑な動作は右を使うという傾向もあり、原猿類の方が類人猿よりも左ききの傾向があることから、樹上生活では右手で枝を持って体を支え左手でえさをとっていたのが、地上に降りてからは右手が手指動作に用いられるようになった、という説を紹介している。なるほど。カエルや魚にも「きき手」(特定の方向に運動が偏る)があるというのも興味深い。▽それにしても、きき手が関わる音(ハンマー)を聞いただけできき手が関わる脳(右ききであれば左脳)が音声分野を主につかさどる右脳とは関わりなく活性化する、というのは、運動と脳の活性化とは実はあまり関係ないことを意味し、ボケないように指先の運動をしている人にとって複雑だろう、という指摘、もっともだ。