元職員 吉田修一

元職員 (100周年書き下ろし)

元職員 (100周年書き下ろし)

タイ旅行へ行かないと言い出した麻衣子の描写は、高級旅館でのバターのシーンを思い起こさせる。そしてミントの弟に殴られて、「醜い日本人」であることを自覚させられた途端、片桐の内面が外面に追いつく。何の根拠もない自信がみなぎる。それがカラ元気であるだけに、破滅の待つ日本へ向かう傲然とした姿が痛々しい。