オリンピックの身代金 奥田英朗

オリンピックの身代金

オリンピックの身代金

傑作。国中が沸きたった東京オリンピック。そのためのインフラ整備で搾取される出稼ぎ労働者たち。この矛盾に、兄を亡くした秋田出身の東大生が立つ。貧富の差は、現在の「格差」問題にも通じている。一方、再び東京オリンピックをという「官製」(あえて言うが)の運動が立ち上がるなか、昭和のように、過激派や暴力団まで抵抗を躊躇するようなムードは起きてこないだろう。ヒロポン中毒となりながら、冷静に犯行を進める主人公が哀しい。犯人を追いかける捜査1課の面々が、いい。