雪冤 大門剛明

雪冤

雪冤

死刑判決が確定した死刑囚の父親である元弁護士の下に真犯人を名乗る男から電話。それは時効完成まもなくの時期だった。この設定で、死刑存置論・廃止論を絡めて、裁判員裁判がスタートしたタイミングに出版。まさに時宜を得ている。作品としては、事件の伏線と登場人物の関係が複雑で、詰め込みすぎという感じもある。構成や文章を工夫すればよいのかもしれないが。元弁護士のかつての裁判は、人柄の厚みを感じさせるくだりではあり、重要な要素であるが、これがあることで、わかりにくくなった感は否めないだろう。と言って、外してしまうと薄くなるし。難しいところだ。