御曹司たちの王朝時代 繁田信一

御曹司たちの王朝時代 (角川選書)

御曹司たちの王朝時代 (角川選書)

『雲州消息』を題材に、御曹司たちが、奉公や男女、付き合いに悩むさまを書簡を紹介しながら伝えている。上級貴族・中級貴族の間のやりとり(例えば殿上人の時代など、中級貴族が上級貴族の御曹司を指図する立場にあることもあるようだ)、上級貴族といっても、道長流でなければ国司たちが相手にしてくれず俸給も負担してくれず、したがって除目では自分の息のかかった中級貴族を受領に送り込まねばならない。仲間外れにされないように、歌や詩で恥をかかないように、なかなか生きにくい世界ではあったようだ。まさに生きるために出世しなくてもよかったが、出世するために生きなければならない御曹司たちは、なかなか生きにくそうではある。