雨森芳洲 上外戸憲一

雨森芳洲―元禄享保の国際人 (中公新書)

雨森芳洲―元禄享保の国際人 (中公新書)

芳洲は、今の滋賀県出身で先祖が浅井の旧臣ということで、豊臣秀吉にきわめて批判的、京都を郷里としたことから幕府にも距離を置き、名分論を重んじ、将軍を日本国王とする白石の論に反発する。また儒教的に商よりも農を尊びつつも、対馬藩の現実論として貿易を擁護する。朝鮮語や中国語を学ぶ過程でそれぞれの民族の固有の文化を知り、原則は重んじつつも柔軟で幅の広い態度を維持する。朝鮮に対し軽侮の姿勢で臨んだ白石に対し、その態度は際立つ。残念ながら芳洲の思考方式は日本人の多数の取るところとならなかったのだが。