日清戦争 原田敬一

日清戦争 (戦争の日本史19)

日清戦争 (戦争の日本史19)

日清戦争については、なんとなく好印象があるが、それがいかに皮相なものか、明らかにしてくれる本。東学党の乱を機に、なんとしても清との戦争に踏み切ろうとする伊藤首相と陸奥外相。7月23日の韓国王宮襲撃に始まり、英国船・高陞号の撃沈をもたらした豊島沖海戦に至るまで、清国側から戦争を仕掛けられたことにし、戦争開始時期もあいまいとなる。このことが、宣戦布告を必須条件とする国際法の確立につながったとは。旅順の虐殺は不勉強にして初めて知った。全く学ばなかったことがのちの南京大虐殺につながる。そして三国干渉。陸奥外相は、干渉の可能性を各国の駐日公使や駐在公使からの情報で感じていたのにもかかわらず楽観視し、遼東半島割譲を要求して還付するという(しかものちの不割譲の確約も取らず)事態を招いた。これが日露戦争・さらには日中戦争へと近代日本の歩む悲劇を準備した。台湾占領戦争も、双方に相当の被害が出ている。そして、民党は国権重視へと転じ、議会は戦費を可決し、軍感謝決議を繰り返す。