血脈 上・中・下 佐藤愛子

血脈 (上) (文春文庫)

血脈 (上) (文春文庫)

血脈 (中) (文春文庫)

血脈 (中) (文春文庫)

血脈 (下) (文春文庫)

血脈 (下) (文春文庫)

なんという迫力だろう。どうしようもない情念に捩じ曲げられるようにシナを自分のものにしていく佐藤紅緑。それを受け入れざるを得ないシナ。航海中の船のようだった家族はバラバラになり、そしてほとんど病気のような女好きのハチローに繰り返される。彼だけではない。ほかの弟たちも暗い情念のようなものに導かれるように破滅へと向かっていく。そして次の世代も。早苗の夫の健介は、たしかにケチで鈍感、冷たい人物であるが、佐藤家の男たちに比べればはるかにマシである。この描き方は、つまり佐藤家の女性である著者にとって、面白くない人物だからであろう。彼が若いころ、早苗にしたことはたしかに情がなく勝手だが、老年になって受けた仕打ちは気の毒でならない。それにしても、大変な一族である。