源実朝 大仏次郎

源実朝 (徳間文庫)

源実朝 (徳間文庫)

実朝を、素直でいて、物に狂おしいほどの執着を見せる源氏の血をあわせもつ人物として、歌を中心に据えて描いている。淡々とライバルを追い込み自滅させていく義時の人物像が見事。政子は尼将軍の割にまったく生彩がなく、御台所はじめそのほかの人物は、和田義盛や孫の朝盛を除き、さほどうまいとは思えないが、鴨長明を俗性を捨てきれぬ形式的な歌を詠む人物として、実朝と対比して表現しているのは、少しおもしろく感じた。