列島創世記 松井武彦

旧石器・縄文・弥生・古墳時代 列島創世記 (全集 日本の歴史 1)

旧石器・縄文・弥生・古墳時代 列島創世記 (全集 日本の歴史 1)

「認知考古学」という耳慣れない言葉が出てくる。人工物や社会をつくったヒトの心に注目するのだそうだ。キーワードは「凝り」。▽縄文後期の環状列石や環状集落などの遺跡は、平等性をイメージしている。それは、現実の社会が必ずしも平等ではないことの証でもある。東日本で装飾が派手、西日本で地味なのは、照葉樹地帯で利用しにくい西日本に比べ、落葉樹で利用しやすい東日本の方が人口が増え、集落自らのメッセージとしての必要性の差異だつる。▽そして、時代が進むと、上下・高低のモニュメントが増えてくる。▽鉄がもたらした社会の変化についても注目している。寒冷期に入り、農機具としての鉄の重要性が増すと、鉄を入手し配分するリーダーの比重が増す。そして山陰など日本海航路で鉄を入手しやすい地域に比べ、吉備などは背後に膨大な需要を抱え、より大きなリーダーとなる。さらに遠い近畿でより大きな古墳群ができることにもつながってくる。また青銅器文化圏と墳墓文化圏との差異、すなわち、大陸からの文明型文化「外からの弥生化」をまともに受けなかった地域とそうでない地域、という区分も提唱している。ただ、北部九州の銅鉾をどう説明するか、それがないのだが。