新参者 東野圭吾

新参者

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見事な謎解きなのだが、その解決編が、全然待ち遠しくない、もっと被害者周辺の話を読みたい、いやどんな奴が犯人なのか知りたい、という困ってしまう傑作。人情の街・日本橋で起きた殺人事件。その捜査の過程で浮かび上がる、いくつもの家族の、お互いを思いやる愛情。それを紡いでいた被害者。ところが、その被害者の、微笑ましいとさえいえる誤解が、悲劇につながることになった。なんという。いい人たちばかり出てきただけに、犯人の家族(能天気という表現がまっさきに思いついてしまうのだが)が登場し検挙へと進んでいく章が、悲しいのだ。困ったことだ。第七章まで、どれも佳いが、個人的には「瀬戸物屋の嫁」が一番だろうか。