サブリミナル・インパクト 下條信輔

サブリミナル・インパクト―情動と潜在認知の現代 (ちくま新書)

サブリミナル・インパクト―情動と潜在認知の現代 (ちくま新書)

キーワードは、「情動」と「潜在認知」。▽快をもたらすための外部の刺激はますます過剰となり、それを受け止める人間の感覚は、上限がはっきりしない。その生物的破断点まで行き着いたのが「ポケモン事件」と言える。▽そして企業がCMでアピール「快適」というのは心地よくゆだねることを意味し、自由ではなくさりげない「(被)制御」である。その戦略は意識下に働きかけてくるから認知が難しいし、わかっていても対抗することは困難だ。せめて「マクドの賢い客」になりたいものだ、著書の言うとおり。▽独創性や天才について考察した第5章は、発見は、「知らずに『知っている』範囲」と「『知っている』と知っている範囲」とを位置付け、「知らずに『知っている』範囲」=「『潜在的に知っている』範囲」であるとする。大発見がなされるときには発見されるものは、すでにこの「前意識」的な知の領域にあったのだ。そして天才とは、周辺、すなわち脳の外側の記憶のデータベースとしての外界との関連が重要であり、複製は困難である。前意識・周辺にしつこくアクセスし、そのささやきに耳を傾ける不断の努力、これが独創性か。