思考停止社会 郷原信郎

思考停止社会~「遵守」に蝕まれる日本 (講談社現代新書)

思考停止社会~「遵守」に蝕まれる日本 (講談社現代新書)

アメリカと日本の法文化を説明するのに、文化包丁と伝家の宝刀の例えは秀逸だ。「思考停止」して法を遵守するのでなく、趣旨や実害の有無を考えて行動しなければならない。社会保険庁の標準報酬月額の減額は、徴収率の向上の目的で受給者の受け取ることのできる年金をカットした、とんでもない行為だとばかり思っていたが、全く違うようだ。おもに行われていたのは、実際の報酬額ですら定かではない経営者や生計を一にする家族のもので、従業員のもの(標準報酬相当額の保険料を実際に天引きされている場合が、まさに被害者に該当する)は多くなく、被害者は果たしてどれだけいたのか、それを標準報酬の訂正をしなければ、高額の年金を受給する権利を滞納者に与えることになってしまうから、まだ良心的な対応とすら言えるのだ。社会保険庁には、相当問題はあるのだろうが、部下をかばうどころか犯罪者呼ばわりした舛添前厚生労働大臣は、問題だ。