謎解き伴大納言絵巻 黒田日出男

謎解き 伴大納言絵巻

謎解き 伴大納言絵巻

 
▽著者は、説話をもとに作られた絵巻を史実で解読しようとすることは厳に慎まなければならないことを強調し、これまで主張された学説を検討することなしに浅薄な論を立てることを排撃する。その姿勢は小気味よい。▽謎の人物について、著者は、第十三紙と第十四紙が接続しないことから、間に場面展開の霞と樹木が描かれていたと想像し、絵巻の対比的な構造から、第一の人物を伴大納言、第二の人物を頭中将と推測した。▽そのほか、源信家の女性たちの解釈や、舎人が連行される場面で、どの人物が舎人か、などの解釈も明快で、気持ちよいくらいだ。改めて、資料室で『伴大納言絵詞』を眺めなおした(小松茂美の舎人の解釈は違っていた。ただ、小松の指す「舎人」は草鞋のような履物を履いていて、黒田の指す裸足の人物の方が、やはり「舎人」だろう)。