クリヴィツキー症候群 逢坂剛

昭和57年のNHK特集「秘密諜報員ベラスコ」の放送で、自らのリポートの価値がなくなってしまった著者(ただ内容はNHKより自らの方が深いと自負しているようだ)の、恨み節ともいえる思いのこもった「謀略のマジック」。初登場の「岡坂神策」がスペイン内戦での共和国政府に食い込んだソ連スパイをめぐる事件に次々に巻き込まれ、そして解決していくうちに闇が浮かび上がってくる。その中心にいる亡命スパイ「クリヴィツキー将軍」を名乗る人物が現れる。それも「将軍」が「自殺」した日に生まれた日本人。これに多重人格障害が絡んで、と、読み応えたっぷり。スペイン内戦に関心があればもっと楽しいだろう。ハメットは、別に、だけど。