キリスト教布教を怖れる幕府と日本貿易を独占したいオランダとの思惑からの風説書は、当初は
ポルトガル排斥・イギリス追い落としの思惑をもって伝えられた情報が、長崎の利権を守るための通詞の判断で取捨選択されて伝えられる。やがて潜入宣教師や在外日本人からの情報が途絶え、オランダが唯一のヨーロッパ情報の窓口となると都合の悪いこと(たとえばオランダ本国がフランスに占領されたり
東インド会社が解散したり)は伝えないようにしていたが、列強が日本に接近してくると、逆に積極的に情報を提供して先に立とうとするようになる。日本にとっての脅威が
キリスト教から「西洋近代」に代わるころだ。そしてオランダ自身もイギリスが主導する「西洋近代」を追いかける立場であった、という記述はおもしろい。