軍国太平記 高宮太平

軍国太平記 (中公文庫)

軍国太平記 (中公文庫)

辻政信と真崎甚三郎の将官演習での岐阜でのやりとりなど、見てきたようで、おもしろい。というか、これが曲者で、どこまでが史料、どこまでが取材、どこからが想像かが、あえてかどうか、ぼかされている部分がある。永田鉄山辻政信を評価し(特に辻への高い評価は意外だった。こういう見方もされていたのだ)、統制派とは皇道派以外のことで「枯尾花」と断じたり、筒井清忠の解説にあるように統制派寄りの筆致だ。ただ、宇垣時代から荒木陸相からの皇道派時代、林陸相からの反皇道派時代と、真崎と永田を軸にさまざまな人物が活写されている様は、まさに「太平記」という題にふさわしい。