刑事魂 萩生田勝

刑事魂 (ちくま新書)

刑事魂 (ちくま新書)

警視庁捜査二課の長い実務経験を持つ著者が、主に所轄の刑事時代の経験をつづっている。やりきれない自殺、麦茶をごちそうになろうとたままた入ったキャバレーで端緒をつかんだ大泥棒の逮捕、尾行の初日と最終日だけは豪遊しなかった道路公団課長、休日出勤のキャリアがたまたま駅で受け取ったチラシに書かれたイベントから捜査が進んだ構造改善局汚職など。もちろん、絵画盗の準主犯に行きあたりながらそれと気づかず接待を受けてしまったり、殺人犯を単なる同居盗と思って油断し取り逃がしてしまったりという失敗談も(どんな泥棒もウソをつく、という記述からすると、もっと大きな失敗を隠しているのかも)。執念で進めた捜査の在り方が浮かび上がってくる。