開国と幕末変革 井上勝生

開国と幕末変革 (日本の歴史)

開国と幕末変革 (日本の歴史)

▽19世紀、日本の「成熟」は深まり、蝦夷地のニシンが肥料として綿花をささえ、上方では年貢として米を買うようになるなど、商品経済は深化した。農民の意識も高まり、代議制への萌芽を見せつつも、上層と下層とで利害は相反するようになってくる。▽ペリーやプチャーチンらと応接した幕府官僚は決して無能ではなく、情報を収集し落ち着いて対応していた。また開国を急ぐ幕府に対し世論を背景に朝廷が拒んだというのは誤りで、徳川斉昭ですら条約はやむなしという立場であったのを、孝明天皇がかたくなに拒んだ。将軍継承問題が絡んで、開国派の多い一橋派が勅許を得ない条約を攻撃するという捻じれが生じる。そして孝明天皇安政の大獄が始まるとあっさりと幕府側に軸足を移し、叱咤した近衛や三条が失脚したのを救おうとはしない(「政治の闇」)。▽長州藩の攘夷決行は国際法からみても理が通らず、植民地化の危機は少なくとも目前ではなかったのに、高杉らはあえて死地に追い込み、藩政を一変させようとした。四ヶ国連合艦隊の攻撃の前に、三田尻では打ちこわしが起きている。