ストーリーとしての競争戦略 楠木建

冒頭の部分は学術的でやや読みづらいが、具体的な第2章から、俄然、読みやすくなる。▽競争優位を確立するためには、「WTP」を増すか、コストを下げるかであり、その戦略としては、「ポジショニング」(何をするか。逆に言えば、何をしないか)と「組織能力」とがある。両者は片方だけではだめだが、やや食い合う傾向にはある。しかし、「組織能力」があれば、「ポジショニング」も力を発揮する。▽「ストーリー」が大切。打つ手打つ手がパスでつながり、ゴールへ向かうように。そして打つ手同士が良い循環をもって強化し合うようになれば。ローカル空港同士を結ぶことでコストを下げ、ターン時間を短縮することに成功した「サウスウェスト航空」の事例が紹介される。▽「賢者の盲点」をつく。非合理な「キラーパス」。客の回転を下げ、高コストな直営方式にこだわった「スターバックス」。「第三の場所」を提供するというコンセプトのためである。合理的であれば真似されやすい。非合理であれば真似されにくい。その非合理が次々に「打つ手」につながり、強化され、「ゴール」に結びつく。競合企業は、「非合理」なことに真似ができない。中古車販売で、もっともマージンが大きい消費者への販売を捨てた「ガリバー」もそうだ。▽そして、なんとかなるだろう、ではなく、悲観主義で論理を詰めていく。失敗を避けようとせず、そこから学ぶようにするポイントを決めておくことを強調している。快著。