政党政治と天皇 伊藤之雄

政党政治と天皇 (日本の歴史)

政党政治と天皇 (日本の歴史)

明治憲法の欠陥は、諸機関の利害が対立した時に調整する役割としての天皇・元老がいつまでも健在・存在するとは限らない、ということであった。病弱な大正天皇、老いていく元老たち。そうしたなか、大隈重信原敬加藤高明ら気骨のある(大隈は相当いい加減なところもあるようだが)政党政治家たちが、官僚閥と妥協し対抗しながら歩みを進めていく。しかし原は暗殺され加藤は病に倒れる。第二次護憲運動は、第一次が都市部だけだったのに対して農村部にまで裾野を広げたところに価値があったが、政党間の対立、中国利権をめぐるアメリカとの対立などが絡み、山県閥の凋落が皮肉にも「軍部」の台頭を招く。剛直な浜口雄幸が狙撃されたことで満洲事変の朝鮮軍越境は不問に付され、理想化された明治天皇の親政に刺激され満洲某重大事件でミソをつけた昭和天皇は陸軍に対し強い態度に出られない。ロンドン軍縮条約問題での鈴木侍従長の加藤軍令部長上奏拒否で軍部への信頼感を喪失していた天皇とその側近たち。悪い方に悪い方に絡まり合って、日本が破滅への道を歩んでいく、それが序章と終章の前畑秀子のエピソードを通じて描き出していく。