豆腐屋の四季 松下竜一

豆腐屋の四季―ある青春の記録 (講談社文庫)

豆腐屋の四季―ある青春の記録 (講談社文庫)

「相聞」の甘やかな数々の歌。にがりが、豆腐にはまったく苦味を感じさせない、そのことと豆腐づくりの辛さ・生活の苦しさを重ね合わせる「にがり」、そして何より母の優しさが沁みとおってくる「瞳の星」。たしかに思わず涙ぐむ。「眼施」。自らもそうでありたいと思う。ただ、しかし。「悲しみの臼」「テレビを禁ず」「爪剪りて」など頑なで、筋が通り過ぎていて、変わり者で、読む者に劣等感とそれに伴う反発を感じさせるような。