中世の巨大地震 矢田俊文

中世の巨大地震 (歴史文化ライブラリー)

中世の巨大地震 (歴史文化ライブラリー)

1096年・1099年・1361年・1498年といった中世の巨大地震を文献史料から被害を探る。京都や奈良の貴族・僧侶の日記くらいしか史料がない場合、伝承などから探る作業は大変だが、考古学の発掘成果もあわせながら、後世に作られた史料や文芸作品の正確性を検証しつつ、被害が明らかにされていく。1498年の地震津波の被害では、寺の縁起などからも津・新居・和歌山などの街が移転していった様子を描いている。そして近世になると、当事者の手紙なども残り、家族の安否を確かめたりおさまるまで外で寝起きしたりと当事者の対応も残るようになる。貞観津波は著者の守備範囲外だったのだろうが、それにしてもタイミングの良い本と言える。それぞれの地域が過去、どのような災害に遭い、再建・移転していったのかを知ることは、今後の防災を考える上で極めて大切なことだろうし、郷土というものを別の角度から見直すことにもなるのではないだろうか。