玻璃の天 北村薫

玻璃の天

玻璃の天

この著者の引き出しの多さには感服するしかない。別宮の謎が明かされ始める。軍国主義に向かう時代の流れを感じさせつつ、浮世絵をもとにした謎とき「幻の橋」。たしかに年をとると頑なになる一方で、終わりにしたい、という気にもなるのだろう。漢字と歌を使った暗号を解いていく「想夫恋」。どうやって考え付くのやら。そして、思想ではなく私怨で殺された軍国主義思想家「玻璃の天」。それにしても「善く敗るる者は亡びず」か。