中世民衆の世界 藤木久志

中世民衆の世界――村の生活と掟 (岩波新書)

中世民衆の世界――村の生活と掟 (岩波新書)

鎌倉幕府法四十二条「年貢さえ納めれば百姓の去留は自由」という飢饉の際の危機管理の原則が一貫して活きている。▽盗みはリンチ死など過酷な村の掟が人と村を大切にする方向に変化し、惣作というシステムで村の衰退を支える。「第1章 村掟ー暴力の克服」。▽惣堂は旅のものでも戦いに敗れた武士も頼れるアジール。そして村人はそこに結集する。落書きが興味深い。「第2章 惣堂ー自立する村」。▽領主からはきめ細かな振る舞いがあって年始の礼には引き出物、春仕事には祝儀(酒手)など村と領主は互酬関係にあった。夫役は有償で「だいは(台飯・人夫賃)が支払われる。ただ働きはない。「第3章 地頭ー村の生活誌」。▽山野の維持には武力を行使する。山仕事の規制は「鎌を取る」が限度。古代からの民俗である意味安全装置。しかし、村々の作法や自制を超えて武力衝突となると周辺の村から「異見(共同裁定)」で和解した。「第4章 山野ー村の戦争」。▽大名は、戦国期に北条氏が目安箱を設けるなど越訴を認める緊急措置もとった。武装した村が自立した力量を備えていた。「禁制」は「村の武装とその行使の正当性を保障する、自力救済の保障書」だった。「第5章 直訴ー平和への道」。