外務省革新派 戸部良一

外務省革新派 (中公新書)

外務省革新派 (中公新書)

白鳥敏夫を通じて「外務省革新派」を論じる。白鳥は大臣でない外交官唯一の戦犯である。外務省革新派とは「世界観」「哲学」が必要だとする派であり、既存の国際法や国際秩序観に立つならば満洲事変も支那事変も日本が悪かったとして頭を下げなければならない。内田外相が満洲事変を法理的に正当化しようとしたことは、幣原外交から大いに「右寄り」になったように感じていたが、実は外交の継続性を保持しようとしたもので、革新派は従来の外交との断絶・転換を主張していた。ただ、その原動力が、人事の停滞に対する不満であり、「僚友会」という組織や貿易省設置の際の全省的反対が革新派を大きく見せたこと、「灰色」の存在が実際以上に革新派を力づけていたことなどは、俗っぽく思想とは別の人間臭さを感じて興味深い。松岡外相が革新派とは遠く、「灰色」に乗っかっていたという指摘も。