「いのち」と帝国日本 小松裕

「いのち」と帝国日本 (全集 日本の歴史 14)

「いのち」と帝国日本 (全集 日本の歴史 14)

通史ではなく、序列化された「いのち」について、戦争、国内、対植民地という観点から、アイヌ・女性・ハンセン病患者・足尾鉱害被害者、そして朝鮮・中国・台湾の人たちに対する日本の政策とそれに追随する「民衆」に対する痛烈な問題意識を迫る。それが「大正デモクラシー」の底の浅さとあっさりファシズムに転化してしまった弱さにつながっていると。霧社事件は、台湾への日本の植民地統治に対する明確な否定のメッセージであり、総体として台湾の人たちの日本植民地行政への感謝があるとすれば、その後の国民党支配がいっそうひどかったこと、また「熟蕃」と「生蕃」との違いも大きかったのではないだろうか。