東京難民 福澤徹三

東京難民

東京難民

だらしなくて流されやすく刹那的なところがある主人公が、いとも簡単に転落していく。父親の会社の倒産で仕送りが止まり学費が払い込まれず、除籍・アパートは追い出され、当初機能した友人ネットワークはすぐに破たん、ポスティング・テレアポティッシュ配り・治験・ホスト・日雇い派遣・中国への運び屋(これは逃げ出す)・タコ部屋、そしてネットカフェからついにホームレスへと。ホームレス狩りにも遭遇する。さまざまな下流食いビジネスの実態とそれに落ち込む人々、翻って自らの現状への安堵と同時に、セーフティーネットが機能していない社会を突きつけられる。コバさんは、すこし説教臭く著者が語るためにわざわざ作った人物という感じが強く(なぜこのインテリが日雇い派遣にいるのかがはっきりしない。小説を書くために会社を辞めたからと一応の説明はあるが)この人物がなくても十分成立したと思うと、惜しい。