小説作法 丹羽文雄

小説作法 (1965年) (角川文庫)

小説作法 (1965年) (角川文庫)

正編で分析の対象としている自作「女靴」は、テーマと言い、設定と言い、さすがなかなかのものだと感じた。実践編でとりあげられている作品「義母の過去」は、その批判していると実際の読者が現れるというくだりもおもしろかった。著者の言わんとすることは、まず自分がよく知っていることから書くこと(それは私小説的になるのだが、ありふれたと思いがちな部分からいかに普遍的なものをつかみだしていくかが大切なのだろう)、通俗的な人物が出てくるのはいいが、著者としては批判する視点が必要ということだ。何度も読み返すべき本だろう。