特務機関長許斐氏利 牧久

特務機関長許斐氏利―風淅瀝として流水寒し

特務機関長許斐氏利―風淅瀝として流水寒し

大川周明に師事し、沖縄戦で自決した長勇に私淑した「大陸浪人許斐氏利の生涯。良い意味での武人としての生き方を通したわけだが、もちろん、現代の視点からは、日本の侵略に手を貸しただけ、ということにもなるだろう。驚いたのは、汪兆銘の脱出が自作自演の疑いがあること、少なくともその配下が蒋介石とつながっていたことだ。どこかで日中の間で和平が結ばれていたらと考えてしまう。また、アジア侵略が、麻薬と一体であったことを改めて思い起こさせる。このことは、どれだけ強調しても、し足りないだろう。あの戦争に意義を見出そうという輩に対する意味でも。