それでも、日本人は「戦争」を選んだ 加藤陽子

それでも、日本人は「戦争」を選んだ

それでも、日本人は「戦争」を選んだ

高校生向けの特別授業ということで平易な語り口だが、内容はとても高度だ。▽戦争とは相手の憲法原理を打ち倒すというもの、というルソーの指摘。▽同時多発テロに対するアメリカは、主権国家への戦争というよりは犯罪者への処罰という意識。それが、日中戦争での日本の国民政府に対する「報償」という意識に通じているという指摘。▽日清戦争の結果としての三国干渉が、政府が弱かったためだとして普通選挙を求める動きにつながった。▽日露戦争の、人的財政的犠牲を払って獲得した、という満蒙への権益意識が満洲事変や日中戦争へとつながっていく。▽陸軍の改革的装いは、第一次大戦でドイツが敗北した理由は、国内が一丸となっていなかったから、という分析にある。▽熱河侵攻は、国際連盟が日本と中国との間を仲介している際に行われたために、全加盟国を敵に回す行為だった。▽日本は、自国の軍隊も国民も大切にしてこなかった。だから敵国への捕虜の扱いにドイツと比べて差があるのは当然。しかし、45年3月のドイツのエネルギー消費量は33年の1、2割増しとは。食糧確保に対する考え方の違いだ。いやいや。これはすごい本だ。