読みにくい本。
ニュージーランド(そしてオーストラリア)という、日本とは経済産業構造が全く異なる国からのTPP批判だけに、ピンとこない点も感じられる。一読した印象は、そのせいか、TPPは実は
アメリカを縛るものや、「ガイアツ」で改善につながるような状況もあるのではないか、ということだ。
ニュージーランドやオーストラリアの厳しい農業安全規制は、輸出に有利となろうし、
ブルネイや
ベトナムのような(そして日本のような)労働規制の緩いところでは、労働条件の改善につながる可能性もある(あくまで経済や通商の交渉で
労働組合が参加できるものでないだけに警戒的に記されているが)。この本からは、医療問題が気になるところであり、
ジェネリック薬品の使用が制限されたり、公的な土地や自然環境、公的サービスが海外(つまりは
アメリカだ)企業の言うがままになりかねない(企業が相手国政府を訴えられる)危険がある。なによりも、交渉過程が公開されず、署名してからでないと検証できないというのでは論外だ。いずれにせよ、日本は、前のめりにならず、しかし中国との
安全保障戦略という側面が強調されているのであればなおさら一概に拒否することもなく、中国接近カードも保持しつつ、対応していくことが必要だろう。