母をお願い 申京淑

母をお願い (集英社文庫)

母をお願い (集英社文庫)

ソウル駅で混雑の中、夫からはぐれてしまった妻。彼女は、実は以前からひどい頭痛に悩まされ、認知症の症状もあった。作家の長女・期待をこめて育てられた長男・妻に頼りっきりだった夫の視点から、そして彼女自身の、おそらく亡くなって鳥などの身体を通して語られる献身と犠牲と、そのなかで感じていた喜びの人生。親に妻に酷いことをしている。そのことを失って初めて気づく。言い古されていることなのに。ただ、作者が苦心したという「エピローグ」は、ぴんとこなかった。バラのロザリオは伏線だったのかもしれないが。このあたり、キリスト教の信仰の土壌があるかどうかで受け止め方も違ってくるのかもしれない。